髪の毛のメカニズム 〜ハゲを隠すために必要な知識〜
ハゲがバレないようにと育毛対策を急ぐ気持ちもわかりますが、育毛剤や育毛シャンプーなどを使用する前に必ず知っておきたいのは「髪の毛の構造」や「発毛のメカニズム」といった髪の毛の基本的な知識です。
どのような育毛対策を行う場合であっても、その対策には「なぜこの方法で髪の毛が生えるのか」という根拠があります。髪の毛の基本知識がないまま、例えば育毛剤を使ったとしても、効果が見込めないばかりでなく、逆に頭皮を傷つけハゲを促進させてしまう場合があります。そうなると、もはやハゲは隠しきれず周囲の視線はあなたの頭頂部にくぎ付けです。
短期間で髪の毛を生やすような効果的な育毛を行うためには、髪の毛をよく知ることが最大の近道です。ここで髪の基本的知識を身につけて、バレないうちに即効性のある育毛を行いましょう!
髪の毛の構造
黒々と伸びる髪の毛は、人間の進化の途中で皮膚が変化したものといわれています。そのため基本的な構造・性質は皮膚と似てるのですが、皮膚と大きく異なる点が2つほどあります。
1つめは神経が通っていないこと。皮膚をつねられると当然痛みを感じますが、美容院で髪の毛を切られても痛みは感じませんよね。毛髪に神経がなくても日頃不便は感じないと思うのですが、これが育毛の上では実は厄介。髪の毛が傷んでいても気付かずに、切れ毛が起こるまで放置してしまう事も多いのです。
2つめの違いは自ら再生しないということ。一度傷んだ髪というのは、どんなにケアしたり栄養を摂取しても自分で回復することはできないのです。
傷んでいることに気がつかず、さらに自身で回復できないとなったら、髪の毛にはできるだけ負担をかけないことが大切になってきますね。
その髪の毛は、部位によって大きく二つに分けられれます。一つは頭皮から外側の「毛幹部」、もう一つは頭皮内部の「毛根部」です。
毛幹部
毛根部は3層構造でできていて、外側から「キューティクル」「コルテックス」「メデュラ」と呼ばれます。これらの3層は主にタンパク質によってできています。
キューティクル
キューティクルは髪の毛の最表面層で、3層の中で最も固いそうです。1面を完全コーティングしているわけではなく、鱗(うろこ)のような形状の一片一片が何枚も貼りついているような状態です。魚が頭から頭皮につ込んだような感じですね(怖っ!)。
コルテックス
毛髪3層の中間層です。毛髪のおよそ90%くらいはこのコルテックスによって組成されています。コルテックスは色素成分であるメラニン色素を含んでおり、このコルテックスの性質や量によって髪の色が変わってきます。規則正しく並んだ繊維質のタンパク質で構成されているため、負荷分散効率が高く非常に強度が高いです。
メデュラ
毛髪3層の中心層です。成分はタンパク質と糖質で組成されています。メデュラのもつ働きは現在でもこれといったものが確認できていません。しかしながら、メデュラが少なかったり形状が不完全である男性は男性型脱毛症(AGA)になりやすかったりするため、髪の毛の強度やハゲの原因として何かしらの影響があるだろうと考えられています。
毛根部
頭皮に内部にあたる毛根部は「毛包」という鞘に包まれています。その中には髪の毛が生成される「毛球」という部分があり、いわば“髪の製造工場”です。
毛球の中には「毛母細胞」という髪の毛のもととなる細胞が詰まっています。毛母細胞は、「毛乳頭」より指令を受け、細胞分裂を繰り返す事によって毛髪を生成していきます。
「毛乳頭」は毛球の最下部にあり、毛母細胞の細胞分裂活動をコントロールします。また、毛乳頭は頭皮周辺の毛細血管から毛髪生成に必要な養分・酸素を受け取り、毛母細胞への供給するという役割も担っています。
毛母細胞分裂によって次々に生成された毛髪細胞は徐々に頭皮外への押し出され、私達の認識する“髪の毛”として生えてくるのです。
ヘアサイクル(毛周期)
日本人の成人男性の毛髪は、個人差がありますが約10本生えているといわれます。これら10万本の髪の毛は1日に0.3〜0.5mmづつ成長します。しかし、そのままずっと伸びつつけるわけではありません。1日に50〜100本程度の抜け毛が発生し、それと同時に抜け毛とほぼ同数の新しい髪の毛が生えるため、常時10万本の髪の毛が保たれているのです。
1本の髪の毛が発毛してから抜けおち、準備期間を経て再び発毛する一連のサイクルを「ヘアサイクル(毛周期)」といいます。このヘアサイクルを理解することは、育毛を行う上で非常に重要です。
ヘアサイクルには次の3つの段階があります。
1.成長期(約2〜5年)
髪の毛の成長は毛母細胞の分裂からスタートします。毛乳頭から命令を受けた毛母細胞は細胞分裂を繰り返し、新たな毛髪細胞を作り出します。次々に生成された毛髪細胞は徐々に頭皮側に押し出されれ、髪の毛として成長するのです。この1本の髪の毛が毛根から成長し続ける期間を「成長期」といいます。1本の髪の毛の成長期期間は2〜5年です。髪の毛全体の約80〜90%の毛髪はこの成長期にあたります。
2.退行期(約2〜3週間)
成長期で細胞分裂を続けていた毛母細胞の働きも徐々に低下していき、やがて活動をストップさせます。毛母細胞が活動停止に向かう期間を「退行期」といいます。髪全体の約1〜2%程度が退行期にあたり、約2〜3週間続きます。
3.休止期(約3ヵ月)
細胞分裂を完全に停止した毛母細胞は、また新たな毛髪を生成すべく栄養を蓄え始めます。この毛母細胞の新たな毛髪生成の準備期間を「休止期」といいます。休止期に入ると、髪の毛は徐々に毛根から切り離されていき、やがて自然に抜けおちます。休止期は約3ヵ月続き、髪の毛全体の約10%は休止期です。毛根は休止期で十分な休息をとり栄養を蓄えてから、再び成長期を迎える事になります。
健康な頭皮はこのヘアサイクルをそれぞれ正しい移行期間を経て循環しています。「今生えている髪の毛の10%にあたる1万本はいつ抜けてもおかしくなく、抜け毛は1日に50〜100本程度は発生する」という正しい知識を知っているのと知らないのとでは、1本の抜け毛で感じるストレスもだいぶ違ってくるのではないでしょうか。
ところが、なにかが原因で十分に成長期を経ることなく、早いタイミングで休止期・退行期に移行してしまう毛根が出てきます。あるいは休止期に入ったまま、再び成長期に移行しない毛根もあります。そうなると抜け毛の新しく生成される毛髪のバランスがくずれ、ヘアサイクルに乱れが生じハゲてしまうことになります。
髪の構造やヘアサイクルの仕組み、しっかり理解できましたか?
同じハゲの症状でも、原因が退行期への早期移行なのか、休止期の栄養貯蓄不足なのかによって、育毛対策は違ってきます。頭頂部のハゲ部分を見られれば見られるほど冷静さを失いそうですが、まずは髪の毛のことを十分理解してあげた方が、結果的にバレない育毛対策の近道となるでしょう。